夫婦カウンセリングの初回
どういったことでお困りか、どうなったらいいかを、それぞれの方にお聞きします。
- お二人の統一見解ではなく、お一人お一人の見解をお伺いします ので、意見を調整しておいでになる必要はありません*1。
- 混乱している状況であるのが普通ですので、理路整然と説明できる必要はありません。 お話しいただいたことを手がかりに必要なことはカウンセラーがお聞きします。
次に行うことは、カウンセリングの目的・目標の明確化です。クライアント様とカウンセラーの共同作業であるカウンセリングで、クライアント様が何を望み、カウンセラーが何を提供するかの調整と約束をします。
具体的には、カウンセラーは『何がどうなったら、おいでになった甲斐がありますか?』とか『今日は何を持って帰りたいですか?』などの質問でクライアント様がカウンセリングに何を求めていらっしゃるかをお聞きします。
必要があれば、カウンセラーはさらにお聞きして共同作業の内容を明確化します。明確にできないことは実現できないからです。
ご夫婦のカウンセリングの場合、お二人の意向が異なることも当然あります。矛盾する目標は達成不能ですから、カウンセリングで何ができるのか共有できるゴール( 例:お二人の問題に関して、今までとは違った形で話す)を設定します。
その後、目的・目標に到達するために必要と思われる範囲でカウンセラーの見立て(現状の分析)、このケースの方針などをお伝えします。
こういったことに納得いただけたら、2回目以降の面接でより具体的に問題を扱っていきます。
夫婦カウンセリングの2回目以降
前回のセッション以降に起こった出来事や、気づいたこと、今日お話ししたいことなどをお伺いします。これらは、初回に行うカウンセリング全体の目標の明確化と同じように、各セッションごとの目的・目標の調整でもあります。カウンセラーは全体の目標、今回のセッションの目的・目標に基づいて、具体的に「問題」を扱っていきます。
お二人の関係を現実に変化させるために必要なことは、以下の2点です。通常、初回ではおおまかな見立て(現状の分析)と、その見立ての理論的背景のさわりをご説明しますが、2回目以降はこういったことに踏み込んでいきます。
- より具体的なレベルに落とし込んだ分析(理解すること)
- 抽象的に考えている限り問題は解決しません。夫婦の問題は、いつも同じ構図を持っているかもしれませんが、一つ一つは具体的なものです。抽象的な解決策によってすべての問題を解決できるのではなく、一つでもいいから、具体的に問題を「きちんと」解決した(双方が心底納得できる)経験が、次の問題も解決できるという気持ちを引き起こし、問題が解決できる良い循環を作ります。そのために、小さいことでもいいのでまず一つ、具体的な問題解決*2が必要になります。そのために、話を具体的なレベルに落として、具体的な問題を分析するのです。
- 理解を行動の変化に繋げるための橋渡し
- 現代人は理性的ですから、理解すると問題を解決できるような気になります。しかし、人間関係の中で繰り返される問題はそうではありません。泳ぎ方や車の運転の仕方を机上で習って理解したからといってすぐに荒波を泳げたり雪道を運転できる人はいません。次に何をするべきか考えながら体を動かしているわけではなく、反射的に体を動かす必要があるからです。コミュニケーションも同じです。考えて反応しているわけではなく情緒的な反射神経によって反応していますから、考えて反応できるのではなく、反射的に今までと違う反応をするためには、最低でも練習が必要です。
- 「最低でも」というのは、場合によっては練習以前にするべきことがあるからです。たとえば足に怪我をしている人がどれだけ一生懸命練習をしても速く走れるようにはならないのと同じように、もし心に傷があるのなら、それに対応することがまず必要なのです。体の傷は目に見えますが、心の傷は目に見えません。本人も気づかないことがほとんどです。私たちは臨床心理学をベースにしているからこそ、こういった心の傷にも適切に対応します。怪我をしている人に「もっとがんばれ!」とはっぱをかけたり、「できない自分が悪い」と自己批判をするのは、非科学的であり、本質的に問題を解決しません。